救急車の中。
結城お爺さんは顔面蒼白になり、ずっと陽祐さんの手を握っていたが、傍らの夏川清美が異常なほど冷静なのに気づき、思わず彼女の方を見た。
二人の婚約が唐突に決まったことは分かっていたが、それでも公衆の前で婚約式を挙げ、木村久美のこともあるし、これからは一緒に暮らしていくのに、この態度は……
結城お爺さんは思わず眉をひそめた。二人に感情がなくても育むことはできるが、佐藤清美が陽祐さんを大切にしないのであれば、長く続くことは難しいだろう。
夏川清美はお爺さんの視線を感じ、やっと我に返って、小声で説明した。「お爺さん、ご心配なく、大丈夫です。」
「大丈夫なのか?」結城お爺さんは年を取っているとはいえ、並の人間ではなく、鋭い目で夏川清美を見つめた。
手術が失敗し、開胸手術まで行い、今は呼吸困難で、いつ心臓が止まってもおかしくない状態なのに、大丈夫だと?それなら一体何が問題なのだろうか?