「くすくすくす……」
久美の笑い声で夏川清美は我に返り、結城陽祐の意味ありげな視線に気づいて慌てて後ずさりした。
「きれいだった?」結城陽祐は清美を追及するように言った。
「まあまあね」清美は男の冗談めかした表情に対して、意外と率直に答えた。
結城陽祐の美しさについて、彼女は否定したことがなかった。
しかし清美が率直になったことで、逆に結城陽祐が落ち着かなくなった。特に先ほどの指先の感触を思い出し、思わず清美の胸元を見てしまい、その視線を清美に見つかってしまった。
これは美しさを鑑賞することとは違う。
清美は先ほど男の指先が自分の胸に触れた瞬間を思い出し、結城陽祐を鋭く睨みつけた。
結城陽祐は端正な顔を真っ赤にして、少し悔しそうに言った。「アドバイスしようと思っただけだ……体重は少し減らした方がいいよ」
その一言で、病室内のかすかな甘い空気は一瞬にして吹き飛んだ。
清美は自分の現在の体重が人目を引くことを知っており、ダイエット計画も立てていた。しかしそれは、このように直接的に嫌われたいということではなかった。表情は一気に冷たくなり、「そう、陽祐さんも体を大切にしないとね」
某御曹司は自分の男としてのプライドが大きく傷つけられたと感じた。
しかし清美はただベッドの上の男を深く見つめ、平坦な声で答えた。「言葉通りの意味よ」
はぁ!
結城陽祐は深いため息をついた。
「お大事に」清美は彼を見ようともしなかった。
「くすくすくす……」久美ちゃんは全く父親の恥ずかしさや怒りを感じ取れず、結城陽祐の美しい顔を見てくすくすと笑い、とても楽しそうだった。
結城陽祐は作り笑いを浮かべて返した。「あなたもお大事に」
清美は「……」と言葉を詰まらせ、突然男に微笑みかけ、先ほど男が直したリボンを極めてゆっくりとした動作で少しずつ歪めていき、そして優雅に久美を抱いて病室を出た。
結城陽祐は「……」
因果応報とはこのことか。
30分後。
「入って」結城陽祐は声の中の苛立ちを抑えた。
健二は社長の機嫌が良くないことを敏感に感じ取り、ゆっくりと入室した。「あの……陽祐さん、まず私があなたを守らないといけないので、花の修理は後回しにできませんか?」
彼は修理したくなかった。
「iPadを持ってきてくれ」結城陽祐は彼の言葉を無視した。