信州市のとある豪邸。
結城和也はスイカを食べ終わり、父親の顔を見上げてから、また週刊誌の原稿に目を落とした。
わずか半日で、この『シンデレラの恋物語』は閲覧数が10万を超え、シェアも1万以上、その話題性は一流女優並みだった。
「何をそんな目で見てる?」結城峰は息子の奇妙な視線が気になり、睨みつけた。
「お父さん、彼の容態が危篤だというニュースを流したのは、お父さん?」結城和也は複雑な表情で尋ねた。
もしそうだとしたら、あの病人のイメージアップを無料でやってあげたことになるじゃないか?
病院の前でのインタビュー以降、結城陽祐の心臓に問題があり、いつ危篤状態になってもおかしくないというニュースはほとんど話題にならず、みんな彼とあのデブ女との恋愛話ばかり議論している。
デブ女と病人に、どんな恋愛話があるというんだ?