第308章 これが彼女の知っている正陽様なの?

夏川清美は結城陽祐との外出が買い物になるとは思ってもみなかった。

健二が大小の買い物袋を抱えて、目だけを出して苦々しい表情で夏川清美と結城陽祐の後ろを歩いていた。

一方、野村黒澤は賢明にも、結城陽祐と夏川清美が買い物をしている間にぬいぐるみ屋で太った狐のぬいぐるみを全て買い占め、ついでにその会社のキャラクターの著作権まで買い取ってしまった。これからは結城家しかこのぬいぐるみを持てないだろう。

彼が太った狐のぬいぐるみを二袋も持って来た時、夏川清美は大喜びで、結城陽祐からも重労働を免除してもらえた。

一行は人々の視線を浴びながらショッピングモールを後にした。

ショッピングモールの片隅で、本来病院に行くはずだった林明里がこの光景を目の当たりにし、目が真っ赤になった。