二人が病院に着いた時、林富岡はすでに救急室から出ていた。
電話の時はまだ気勢を上げていた老人が、今は顔色が青ざめ、唇が紫色になってベッドに横たわっていた。前回会った時より五歳以上も老けて見えた。
夏川清美を見るなり、林富岡は不満げに鼻を鳴らした。「よくも来たな?」
そして次の瞬間、結城陽祐も入ってくるのを見ると、さらに表情を曇らせた。「正陽様を後ろ盾にすれば、この父親を無視していいと思っているのか?」
「まだ人を罵る元気があるようですね」夏川清美は軽く笑い、目には嘲りの色が浮かんでいた。
元の彼女がこんな男に何の父性愛を期待できたというのだろう?
利己的で愚かな老人に、どんな良い愛情が与えられるというのか?
「あなた、目が覚めたの?」夏川清美が言い終わるや否や、鈴木末子が突然駆け込んできて、林富岡のベッドの傍に飛び込んだ。「あなた、あなた、大丈夫で良かった、本当に良かった。私をこんなに心配させて。もしもあなたに何かあったら、私たち母娘はどうすればいいの!」
鈴木末子は心から悲しんでいるかのように泣き、まるで林富岡の葬式でも行っているかのような悲痛さだった。
しかし、さっきまで夏川清美に怒りを向けていた林富岡が、今では毛を撫でられた大型犬のように従順になっているのを見て、夏川清美は密かにこの継母に拍手を送った。
なるほど、彼女が林富岡を完全に掌握できているわけだ。
林富岡のような、うぬぼれが強いくせに実力のない男は、女性のこういう手法に最も弱いのだ。
彼に対する底なしの憧れと崇拝、彼を天とし地とし、そこに女性らしい依存と優しさを加える。
彼は自分がこの女性を魅了し、相手が天地を動かすほど自分を愛していると思い込んでいるが、実際には完全にコントロールされている。すべての行動が相手の誘導に従って一歩一歩進んでいるのに、彼自身はこれらすべてが天の最良の配剤だと思い込んでいる。
「大丈夫だよ、末子ちゃん、心配しないで。私の体のことは君が一番よく分かっているだろう...」林富岡は鈴木末子の腰に手を回し、彼女を自分の胸に抱き寄せながら、低い声で慰めた。夏川清美に対する態度とは全く別人のようだった。
夏川清美は可笑しくもあり感慨深くもあった。男というものは、まったく。