第336章 礼儀知らずの坊ちゃん

林富岡が鈴木末子を慰めようとした時、耐えられない熱気が顔に当たり、鈴木末子を抱く手が固まった。

思わず地面の臭い靴下を見て、健二を睨みつけた。「お前たちは何を考えているんだ。全く躾がなってない。上品な紳士の正陽様だって？あいつは礼儀知らずの遊び人、ただの野蛮人だ！」

健二は驚いた。この林社長は本当に凄い、うちの正陽様の本質をよく分かっているな。

でもそうだとしても、路上で正陽様の悪口を言うわけにはいかない。健二は手を振った。「お家までお送りしましょう。病院の前でこんな騒ぎを起こすのは良くありません。医療トラブルと勘違いされかねません」

健二が言い終わると、どこからともなく二人の男が現れ、強引に彼らを車に乗せた。周りで撮影しようとしていた人々もすぐに排除された。

夏川清美が出てきた時には、病院の入り口は整然としており、あの三人家族の姿はもうなく、ただ健二の凛々しい背中が玄関で彼らを待っているのが見えた。

「帰ろう」結城陽祐は夏川清美の手を取り、車の方へ歩き出した。

夏川清美は「うん」と返事をして、ついて行こうとした時、結城陽祐が突然立ち止まり、表情が暗くなった。

結城陽祐の視線の先を追うと、健二の足が目に入り、すぐに状況を理解した。「あれ？健二さん、片方の靴下だけなの？」

健二は下を向き、困ったように答えた。「汚れてしまったので」

「そう」夏川清美は隣の結城陽祐を見た。男の表情はますます悪くなっていた。

傍らの健二はようやく夏川清美の真意を悟り、即座に靴を脱ぎ始め、もう片方の靴下もすぐにゴミ箱に捨てた。

きちんと揃えた健二が二人の前に来て手柄顔をしたが、今度は夏川清美が気になった。この男が夏場に分厚い綿の吸汗靴下を履いて、朝から数キロも走っていたことを思い出し、思わず靴下に触れた手に目が行った。「手を洗ってきた方がいいんじゃない？」

健二「……」人生は本当に難しい！

……

林家。

バン！バン！バン！

「許せない！」三人は適当に呼び止めた軽ワゴン車に詰め込まれ、高級住宅街まで送られたが、警備員に入れてもらえず、結局林富岡が怒鳴って警備員を説得してようやく通してもらえた。

中に入るなり林富岡は物を投げ始めた。