「はい」
野村黒澤は、陽祐さんのこの決断が何を意味するのかを理解していた。
林家のこの5パーセントが手に入らなければ、彼らは今後、厳しい戦いを強いられることになる。残りの株式は非常に分散しており、その小株主たちは結城財閥に深く根を下ろし、利害関係が複雑に絡み合っている。それぞれが老狐のような狡猾な存在で、日和見主義者であり、その株式を手に入れるのは容易ではない。
さらに結城家の二つの家系も彼らを注視しており、本家の当主もまもなく出所する。株式を奪うどころか、支持を得ることさえ難しい。
これが、陽祐さんが別の道を探り、残りの5パーセントの株式の所在を必死に調査した理由だった。
誰が想像しただろうか。株式は手に入らなかったものの、陽祐さんは先に息子と妻を得ることになるとは。