ドキドキドキ。
夏川清美は自分の心臓の鼓動を聞きながら、この瞬間の気持ちを実感していた。
しかし、清美が春の気持ちに浸っているとき、結城陽祐が長い脚で数歩彼女の側まで歩み寄り、「そんなに感動しないで、私も強制されただけだから」と言った。
そう言うと、男は突然指を鳴らした。
すると中庭全体が明るくなり、清美が陽祐の言葉を理解する前に、結城お爺さん、執事、健二、木村久美を抱いている藤堂さん、さらには野村越、野村黒澤まで、そして雲おばさんがろうそくの立てられたケーキを押して現れた。
みんなの顔を見て、清美の笑顔はより温かくなった。
陽祐が何のためにこれをしたのかは気にせず、心は甘酸っぱい気持ちでいっぱいだった。でも、それだけではなかった。
そのとき、陽祐は彼女の手首を掴んで椅子に座らせ、雲おばさんがケーキを置き、全員が期待を込めて彼女を見つめながら、「願い事をしてください」と言った。
清美は見慣れた顔々を見つめ、一瞬戸惑った。願い事?
こんなことは今まで一度もしたことがなく、思わず横にいる陽祐を見上げた。
陽祐は少し心を痛めた。このぽっちゃりくんは誕生日に願い事をしたことがないのか。自分もないけど、それでも心が痛む。骨ばった長い指で清美の頭をつついて、「もし思いつかないなら、私に恋してもらえるように願うとか。願い事だから、大きく願わないとね」。
清美は黙って陽祐に嫌そうな目を向け、それから両手を合わせ、しばらくしてから顔を上げた。
「ん?」陽祐はぽっちゃりくんがどんな願い事をしたのか気になった。
清美は男を見上げて軽く微笑み、「大きな願い事をしろって言いましたよね。だから私は体重100斤と引き換えに、日本が平和で豊かで、天候も良好であることを願いました」。
陽祐、「……」
一同、「……」
「ハハハハ、陽祐さん、あなたの美人の菅野はなんて可愛いんだ!」沢田浩司は入ってきた途端に清美の言葉を聞いて、思わず大笑いし、陽祐の宝物は本当に面白いと感じた。
清美は、この人たちは一体何という呼び方をしているんだと思った。
成瀬美里は沢田ほど大げさには笑わなかったものの、顔には濃い笑みを浮かべており、明らかに清美に大いに楽しませられていた。
この子はなんて才気があるんだろう!
陽祐は二人を嫌そうに一瞥し、「プレゼント」と言った。