十分後、夏川清美は手術着を着て、完全武装で手術室に入った。
夜間の緊急事態で、市立病院の外科部長が研修で不在のため、手術に問題が発生し、手術室全体が混乱していた。
夏川清美は眉をひそめながら入室し、「電気メス」と言った。
声は大きくなかったが、反論を許さない雰囲気を持っており、混乱していた手術室は突然静かになった。
誰かが彼女が誰なのか尋ねようとしたが、夏川清美は執刀医を見上げて、「あなたは私の助手をしてください」と言った。
「あなたは誰ですか?」相手は夏川清美の突然の乱入に不満そうだった。
「私が誰かは後で誰かが説明してくれるでしょう。今は手術を始めましょう」夏川清美はそう言って、林富岡の状態を確認した。重度の不整脈、心臓肥大、心筋梗塞、弁膜症の合併症で、予想以上に悪く、さらに虚血性脳卒中も加わり、非常に複雑な状態だった。