鈴木末子が動画を今まで保存して公開しなかったのは、何かを気遣っていたからではなく、この動画が公開されると、林家と林夏美の関係が水と火のように相容れないものになっているのに、正陽様がまだあの太った男を庇っているということを皆が知ることになるのを心配していたからだ。
その時は林夏美と結城陽祐のイメージにダメージを与え、結城財閥にもある程度の影響を及ぼすだろうが、同時に彼女たちの立場をより一層困難にすることにもなるだろう。
結局のところ、槙島家が夏美ちゃんとの縁組みを急いでいるのは、彼女に対して本当に深い情があるからではなく、林家と結城家のこの関係を重視しているからだ。
しかし、もし動画が公開されれば、これらすべてが表面化することになり、今後は人々が母娘の面子を立ててくれなくなるかもしれない。
だから、どうしても必要な時以外は、この動画を公開してはいけない!
「お母さん!」林夏美は鈴木末子の返事を待ちきれず、イライラした様子で母を呼んだ。
鈴木末子は我に返り、「夏美ちゃん、まだ急ぐことはないわ」
「どうして急がないの?なぜ急がないの?私たちは本当にあのデブを恐れているの?お母さん、忘れないで、あの女は私の足を台無しにしたのよ!」自分の足のことに触れると、林夏美の目は暗い影を帯びた。
「夏美ちゃん、こういう時こそ、冷静にならなければいけないのよ!」鈴木末子は諭すように言った。
「じゃあ、私たちはどうすればいいの!」林夏美はこのお金で海外に行って足の治療を受けることを期待していたのに、今はそれもなくなってしまった。これからどうすればいいの?将来はどうなるの!
「お母さんが漢方医院に連れて行って、また鍼灸をしましょう。この前、鍼灸が効果があると言っていたでしょう」鈴木末子は今は藁をも掴む思いだった。
「何の効果があるの?私の足はまだこのままじゃない。全然効果なんてないわ!」林夏美は憎しみと怨みと後悔に満ちていた。
「試してみましょう。試さないよりはましでしょう?」鈴木末子は娘を低い声で宥めながら、夏美ちゃんの足を見て胸が痛んだ。しかし今は他に方法がない。神経が死んでしまっては、治るといって治せるものではない。