病院。
林富岡はベッドに横たわり、生気を失っていた。一ヶ月前の結城家での婚約パーティーで意気揚々としていた中年男性とは別人のようだった。
結城陽祐は足を組んでソファに座り、ベッドの上の生気のない男を見つめながら、「話は終わりか?」と尋ねた。
「ありがとうございます、二少様」林富岡は掠れた声で感謝を述べた。
夏川清美が去った日以来、彼は深い絶望に陥り、感情をコントロールできなくなり、何度も意識を失いかけたが、最後の一息で生き延びた。
その一息を繋ぎとめていたのは、贖罪の思いだった。
彼は夏川清美の最後の言葉が真実か嘘か分からなかった。嘘であってほしいと願っていたが、それ以前に彼女が語った言葉は全て真実だと分かっていた。
長年、彼の目に入らない、あるいは意図的に無視してきた場所で、娘は人としての扱いを受けない苦しみを味わっていた。それなのに彼は「知らなかった」の一言で責任を逃れようとしていた。