法廷の外。
林富岡は夏川清美を見かけ、彼女の後ろには結城陽祐の専属ボディーガードがついていた。躊躇いながら近づき、「清美...」
夏川清美は林富岡の方を振り向いた。彼はスーツの下に病院の患者服を着ており、顔色は青白く疲れ果てた様子で、自分が生まれ変わった時の成功した実業家の姿は微塵もなかった。複雑な心境ながら、いつもの冷たい声で「何か用?」と言った。
「清美、お父さんを許してくれるかな?」林富岡は恐る恐る尋ねた。
夏川清美はそれを聞いて悲しい気持ちになり、目の前で随分と老けた男を見つめながら「すみません、私には彼女の代わりはできません」と答えた。
言い終わると、夏川清美は車に乗り込んだ。
林富岡の体は少し硬くなり、思わず夏川清美を掴もうとしたが空を切った。空っぽの手のひらを見下ろし、再び顔を上げた時には、夏川清美の乗った車はすでにエンジンをかけ、すぐに視界から消えていった。