第382章 あなたは私に飴をくれたことがありますか?

某高級ホテルにて。

林夏美は山田真由を追いかけられなかったが、幸いにも証明書やカード、アクセサリーは彼女が背負っているバッグの中にあった。

しかし、普段から浪費家の彼女はカードの残高が少なく、母親のカードは凍結されて引き出せず、スーツケースいっぱいのバッグは見るだけで使えない状態だった。

誰かに売ろうとしても時間がかかるだろう。

林夏美は不安と憎しみに苛まれていた。

鏡の中の惨めな自分を見つめると、前髪の半分が引き抜かれて頭皮が見え、醜くて不自然な姿。さらに恐ろしいことに、槙島秀夫に絞められた首の跡が、繊細な肌の上に痛々しく残っていた。

林夏美は体を震わせながら、時には林夏美というデブを恨み、時には冷血な義父の林富岡を恨み、時には裏切り者の山田真由を恨み、そして槙島秀夫の情け容赦ない悪意を恨んだ。最後には鈴木末子がなぜ一幸のような役立たずの男と結婚したのかと恨んだ。もし最初から林富岡の娘だったら、人生はこうならなかったのではないかと。