京都。
飛行機は一時間半後に着陸した。
信州市とは違い、京都では結城家は山一つを所有するような優位性はなかった。
飛行機は小型空港に停まった。
夏川清美は密かに思った。結城家は金持ちとはいえ、限度があるようだ。さもなければ、医療業界がこれほど儲かるのかと疑わずにはいられない!
飛行機を降りると、送迎の車が早くも待機していた。
一行が車に乗り込んだ。機内で一度母乳を飲んだ木村久美は今ぐっすりと眠っており、夏川清美は窓の外を眺める余裕ができた。
彼女はしばらく京都に戻っていなかった。今、見慣れた街の喧騒を眺めていると、街は記憶の中のままだったが、彼女自身は大きく変わっていた。
自分が亡くなってからのこの四ヶ月余り、家のあの頑固な父はどうしているだろうか?
軽くため息をつき、夏川清美は視線を戻すと、隣の結城陽祐が前方の赤信号を見つめる表情が険しいのに気づき、思わず尋ねた。「どうしたの?」
「大輔さん、Uターンして」結城陽祐は夏川清美の質問に答えず、一日早く京都に到着していた大輔さんに突然指示を出した。
夏川清美は眉をひそめた。Uターンは逆走になる。
しかし大輔さんは、自分の二少の言葉に問題があるとは全く気付かないようで、半秒の躊躇もなくUターンを始めた。
結城陽祐の視線は赤信号の外、交差点の右折レーンをゆっくりと走るセメントトラックに釘付けになっていた。
夏川清美は理由は分からなかったが、大人しく黙ることを選んだ。
彼らの後ろを走っていた結城家の車両も躊躇なく逆走し、他の車のドライバーたちは彼らに向かってクラクションを鳴らし続け、さらには苛立ちながら大声で罵声を浴びせる者もいた。
しかし大輔さんも結城陽祐も聞こえないかのように、我が道を行くように逆走を続けた。
健二は結城陽祐の合図で窓を開け、後ろの車に一緒にUターンするよう呼びかけたが、後ろの人々は全く相手にせず、「頭がおかしい」とつぶやいた。
しかし、異変は一瞬のことだった。青信号に変わった瞬間、本来彼らの後ろにいるはずの車が突然スピードを上げ、そして右折レーンで停止するはずの大型セメントトラックが、制御を失ったかのように追い越し車両に向かって突っ込んでいった。
同時に、その車の後ろで追い越しをしていた三台の車も無事ではいられなかった。
バン!バン!バン!