翌日、早朝から結城邸全体が動き出した。
夏川清美は早めに木村久美に服を着せ、小さな子をしっかりと包んで抱きしめた。
健二は大きな箱を二つ持ち、藤堂さんと雲さん、そして一緒に出発する使用人たちやガードマンたちも、皆手ぶらではなかった。
見送りに来た結城お爺さんまでも木村久美のおもちゃを持っていた。
ただ結城陽祐だけは、片手をポケットに入れ、優雅な貴公子の姿で、のんびりと先頭を歩いていた。
夏川清美は子供を抱きながら彼の横を歩き、自分がまだベビーシッター、それも無料の頃のようだと感じた。
くそっ。
車庫に着くと、結城陽祐が先に車に乗り込み、窓を開けて名残惜しそうなお爺さんを見て、「行きましょう」と言った。
「やっぱり私は戻ろうかな。ここにいても問題ないし、彼らは私のことは恨んでないんだから」お爺さんは木村久美の可愛らしい顔を見つめ、非常に名残惜しそうだった。