全校の教職員と学生たちは、身動きひとつせずに聞き入っていた。
医科大学の学生として、彼らは夏川お爺さんの名前を聞いたことがないかもしれないが、夏川先生の天才的な名声は必ず耳にしていたはずだ。
彼女の死は医学界全体に衝撃を与え、国内の権威ある医学専門誌は彼女を追悼するため、一冊丸ごと彼女の生涯を特集したほどだった。
先日、彼女の手術器具一式がチャリティーオークションで2億円で落札され、彼女の名声は頂点に達した。
この人が夏川先生の祖父で、漢方医学界の重鎮だというのか?
そして今、医科大学で弟子を取ろうとしているのか?
みんなはこのお爺さんの気性には感心しないものの、もし本当に彼の弟子になれれば、夏川先生の師弟になれるということで、それだけでも一生安泰だろう?
しかも夏川先生は心臓外科の加藤院長の師妹でもある。このお爺さんを師匠として迎えれば、加藤院長とも繋がりができる。
将来は計り知れない。
それらを別にしても、さっきのお爺さんが宗像校長に対してあれほど横柄な態度を取ったのに、いつも威張り散らしている校長が怒るどころか、まるで取り入るような態度を見せたことからも、この人物が本物だということがわかる。
彼の最後の弟子になれるなら、少しぐらい叱られたって構わないだろう?
下の席にいる学生たちは、損得を考えた上で、みな意欲を見せていた。
夏川清美は、どこにいても誰かに100円借りているかのように眉をひそめている祖父を見て、上で様子を窺っている結城陽祐をちらりと見た後、二人の寮友に小声で言った。「叔父さんと叔母さんが外で待ってるから、先に行くね。また後で。」
岡田千明は夏川清美の手を引き止めて、「待たないの?あのお爺さんの弟子になる条件を聞いてみない?私たちにもチャンスがあるかもしれないよ。」
「いいの、あの人の気性が悪すぎて、私には耐えられないわ。」と言いながら、夏川清美は立ち上がろうとした。
しかし、彼女の後ろにいた神崎裕美はそれを聞いて、思わず嘲笑った。「夏川お爺さんがあなたを見込むかどうかも分からないのに、お爺さんの気性が悪いなんて言えるの!」
「うん、あなたが最後の弟子になれますように!」夏川清美は心から祝福した。