「本当にそんなに大切なの?自分の命より大切?」結城陽祐は夏川清美をじっと見つめながら一言一言尋ねた。
「もちろんそんなことはないわ」この質問に夏川清美は即座に答えた。
結城陽祐は彼女を言いようのない表情で見つめ、「それなのに、なぜ危険を冒すんだ?」
夏川清美はその問いに黙り込んだ。
彼女は二十七年生きてきたが、十六歳から加藤迅のことが好きだった。丸十一年もの時間、不可解な死を迎え、それは加藤迅と関係があった。
加藤迅への感情は手放せても、自分がどうして死んだのかわからないまま受け入れることはできなかった。
自分自身への説明が必要だった。
そうでなければ、前半生の意味が分からなくなってしまう。
まるでピアノ曲がクライマックスに達したところで突然途切れてしまったように、心に引っかかり続け、疑問を抱えたまま前に進むことができない。