第531章 自分が何をしたのか分からないの?

「おやすみ」と言い終わると、加藤迅は鏡を見つめながら静かに呟いた。「時が来たな」

電話を切った夏川清美は深いため息をついた。

なぜか最近、先輩と話すたびに異常な重圧を感じ、時には息が詰まりそうな錯覚さえ覚えていた。

幸い相手は固執せず、本当に同意してくれた。

目的を達成するために、簡単には諦めないと思っていたのに。

しかし夏川清美は今、他のことを考える余裕がなく、頭の中は彼とどう話し合うかでいっぱいだった。実は少し怖かった。自分から近づいても、前回のように無視されるのではないかと。

そうなったら、もう二度と勇気が出せないかもしれない。

軽くため息をつき、夏川清美は考えすぎないようにした。考えれば考えるほど、行動が鈍くなるものだから。

歯を食いしばって外へ向かった。