第600章 久美ちゃんが消えた!

夏川清美は最後にやはり首を振った。

夏美さんは何か言おうとしたが、夏川清美の憔悴した顔を見て、最近清美から離れると黙り込む加藤迅のことを思い出し、軽くため息をつきながらメイクアップアーティストに化粧を頼んだ。

夏川清美は目を閉じ、心は沈んでいた。

一時間後、夏川清美の化粧が完成した。

メイクは彼女の顔の疲れを隠したが、全身から漂う憔悴感は隠せず、花嫁としての喜びが全く感じられなかった。

たった一週間の違いなのに、夏川清美の心境は全く異なっていた。

最初は心に解けない疑問があったものの、先輩を十年間好きだったことで、二人が結婚の殿堂に入れることは貴重な幸せだと思い、結婚式にも期待を抱いていた。

しかし今日の夏川清美は、どうしても喜べなかった。

ついに願いが叶うはずなのに、先輩をあれほど長年好きだったのに、少女時代に二人の結婚式を夢見たこともあったのに、いざという時になって頭の中は別の顔でいっぱいで、なぜなのかさえわからなかった。