常盤巧は夏川清美が予約した心理医師だった。
病院に来る直前に夏川清美は彼と約束を取り付けていた。
「夏川さん、本当に催眠療法を受けたいのですか?あなたの話によると、催眠をかけるのは危険かもしれません」常盤先生は夏川清美を真剣な眼差しで見つめながら尋ねた。
「分かっています」夏川清美は心臓外科医だが、催眠についても多少の知識があった。もし本当に松本先生の催眠を受けていたのなら、他の医師が経路を知らないまま記憶を取り戻すための催眠をかけるのは、困難なだけでなく非常に危険だった。
しかし心の中の疑問は既に彼女の日常生活に影響を及ぼしており、このまま記憶喪失の状態を続けることはできなかった。
試さなければ、何か重要なことを見逃してしまうような気がしてならなかった。
「分かりました」常盤先生は慎重に答えた。「では、始めましょう」