夏川清美は常盤先生のところから出てきて、心身ともにひどく落ち込んでいた。
この落ち込みは精神的なものだけでなく、身体的なものでもあった。
彼女は体調が非常に悪く、話す気力さえ失っていた。
しかし夏川清美は一つのことを確信していた。彼女の記憶の喪失は爆発によるものではなく、催眠によるものだった。
以前、先輩の説明を聞いたとき、何か違和感を覚えていたが、それが何なのかわからなかった。
結城陽祐の部下からのメッセージを見て、今日の催眠の状況と合わせて考えると、彼女の心の中でおおよその理解ができていた。
確かに彼女は催眠をかけられ、林夏美に関する記憶が消されていた。
しかし、彼女は先輩に対して最悪の推測をしたくなかった。少なくとも、今日の催眠で思い出した断片的な記憶から判断すると、林夏美の記憶は決して楽しいものではなかった。
催眠から30分以上経っても、彼女の気分は依然として最悪だった。
この不調は身体にも及び、頭がズキズキと痛み、下腹部の傷跡もうずき、全身がだるかった。
雲さんは夏川清美のこの状態を見て退院を主張し、最後には三人で木村久美を連れて農場の方へ戻った。
「若奥様、お子様は私にお任せください。先に休んでください」別荘の入り口で、立花雅は木村久美を受け取りながら夏川清美に言った。
夏川清美は珍しく多くを語らず、木村久美の頬にキスをして、「ママは夜に迎えに来るわね」と言った。
雲さんは心配そうに「清美ちゃん、本当に大丈夫?顔色がとても悪いわよ」と言った。
「大丈夫よ、少し休めば良くなるわ」夏川清美は無理に笑顔を作り、木村久美に手を振って別荘に入った。
加藤迅はまだそこにいて、夏川清美の様子がおかしいのを見て心配そうに近寄り、「清美ちゃん、どうしたの?」
「少し冷たい風に当たったみたい。横になれば大丈夫よ」夏川清美はそう言って自分の部屋へ向かった。
加藤迅は眉をひそめ、「木村久美は?」
「雲おばさんに預けたわ」夏川清美は振り返らずに答えた。
加藤迅は「ああ」と言い、夏川清美の後ろ姿を深く考えながら見つめ、彼女が部屋に入ると電話をかけた。「どうなっている?」
「清美さんは心理医を訪ねました」向こうは低い声で答えた。
加藤迅は携帯を握る手が少し硬くなり、「相談内容はわかったか?」