第602章 二少、私たちそろそろ行きましょうか?

夏川清美はまだクマのぬいぐるみを抱きしめたまま、少し困惑した様子で男性を見つめていた。他の人々も清美の視線に従って結城陽祐を見た。

三月の空の下、男性はベージュのズボンに黒いコートを合わせ、以前より痩せたように見えたが、より凛々しく見えた。天下を惑わすような端正な顔立ちと生まれながらの気品は、いつでもどこでも、最も輝かしい存在となっていた。

男性はバンドのボーカリストに何か言い、そしてピアノの前に座った。清らかで少しかすれた声がマイクから流れてきた。「皆様の邪魔をして申し訳ありません。お詫びとして皆様に一曲歌わせていただきます。あなたの幸せを願って。」

結城陽祐は新郎新婦に一曲贈りたいと言いたかったが、言葉にできなかった。佐藤清美に一曲贈ると言うのも、場違いだった。