第619章 林さんは痩せましたね、本当に綺麗です

加藤迅は夏川清美の病室を離れた翌日、誰にも告げずに退院した。

静かに去っていった。

夏川清美はそれを聞いて、軽くため息をつき、何を言えばいいのか分からなかった。

結城陽祐は威圧的に彼女を見つめ、「ため息をつくな」と言った。

「はいはい」夏川清美は仕方なく肩をすくめた。この男の嫉妬は本当に止まらないわね。

しかし、加藤迅が静かに退院したことで、結城陽祐の心は随分と軽くなった。

その後の夏川清美の入院期間約半月の間、結城陽祐は毎日様々な料理を彼女に届けさせ、さらに夏川清美に多く食べさせるため、自分も一緒に食べた結果、二人とも約3キロ太った。

ただし、結城陽祐の3キロは、186センチの体格では目立たなかった。

しかし夏川清美は違った。

結婚式前の数日間、彼女は精神的に不安定で、不眠も重なり47キロまで痩せていたが、今回2.5キロ太って50キロに戻り、肌も白くなって、全体的にみずみずしく若々しく見えた。

3月の陽光の中に立つ姿は白く輝かしく、結城陽祐は足が動かなくなるほど見とれていた。

一方、夏川清美も、この半月間自分と同じ病院着を着ていたが今日は黒いコートに着替え、より一層気品があり美しく見える男性に魅了されていた。

誰かを好きになるというのは、きっとこういうことなのだろう。ふとした瞬間に相手に魅了されてしまうこと。

結城陽祐は夏川清美の眼差しを見て、前に出て彼女の手を取り、優しく微笑んで「行こう、木村久美が家で待ってるよ」と言った。

「うん」夏川清美は頷いて、男性の歩調に合わせた。

ところが意外なことに、病室を出るとすぐに見覚えのある人物に出会い、夏川清美は驚いて「ダニエル?」と声を上げた。

彼らの傍を通り過ぎようとしていたダニエルは足を止め、夏川清美の方を振り返った。最初は驚き、そして夏川清美以上に驚いた様子で「林さん?」と言った。

「そう、なんて偶然」夏川清美は都林市でなつきの社長に会うとは思わなかった。この入院期間中に夏川清美の記憶はほぼ戻っており、催眠の影響かもしれないが、以前よりも細部まではっきりと覚えていた。

だから目の前のなつきの社長を見て、夏川清美は当時の援助に深く感謝していた。