第642章 太った子を探してなかったの?

四月の草が伸び、鶯が飛び交う頃は、京都で最も心地よい月である。

特に月ヶ池邸は、至る所に生命の息吹が満ちていた。

夏川清美が入ると、すぐに清々しい春風が吹き、若葉の香りが漂い、心身ともにリラックスできた。

彼女は都林市の農場よりも、月ヶ池邸の方が美しく快適だと気づいた。

ブドウ棚を通りかかると、ちょうどブドウの花が咲いていて、一房一房の緑の小さな花が、結城陽祐の腕の中で木村久美が興奮して手を伸ばしてああああと叫び、夏川清美が一枚の葉を摘んで手に持って遊ばせてようやく満足した。

結城お爺さんは曾孫を可愛がり、彼の手の中の葉を見下すように見て、小さな子を抱き上げ、「葉っぱなんかに何の価値があるの?曽根お爺ちゃんがバラを摘んであげるよ!」

夏川清美はお爺さんの視線の先にある満開のバラを見て、少し眉を上げ、結城陽祐を見た。男は眉を上げて、「バラに何の価値があるの?この季節なら、あそこのドラゴンブルーサファイアも丁度見頃のはずだよ。」