第652章 こいつマジでクマの胆持ってんのか?

「なぜだ」これは恐らく結城陽祐が今日聞いた中で最も可笑しい言葉だった。

琥珀色の細長い瞳で、冷ややかに地面に倒れている男を見つめた。

距離があったにも関わらず、宗像正紀は正陽様の威圧感に圧倒され、少し酔いが覚めた。しかし、個室にいた酒友達が全員駆けつけてきたのを見て、大勢の目の前で面子を失いたくなかった。さらに、会社の上層部で間もなく起こる人事異動のことを思い出し、酒の勢いで言った。「知ったかぶりはよせ。お前なんて見かけだけで、実権なんて何もない。いずれ取締役会から追い出されるんだ。俺の父を解雇する資格なんてないだろう!」

宗像正紀のこの言葉に、夏川清美までが眉をひそめ、冷たい目を向けた。

他の人々は地面に倒れている男を驚きの表情で見つめていた。こいつは熊の胆でも持ってるのか?誰を挑発するかと思えば、まさかこの人を...しかも見かけだけだと?一体どこからそんな勇気が湧いてきたんだ?