17- ハクナマタタ

「私は今まで商業規模でビーフファヒータを作ったことがないわ」とマリッサは、アカリとシトラと一緒に買い物リストを作りながら言った。彼女は、ラファエルがそれを食べる時の柔らかな喘ぎ声を思い出さないように必死だった。

「きっと上手くいくわよ、マー!」アカリは彼女の肩を叩き、マリッサが提供したラップトップで帳簿をつけ始めた。

この2週間、彼女はアカリをフリントと一緒にスーパーに買い物に行かせていた。リスクを取りたくなかったのだ。

シンクレア家と向き合う心の準備をしたかったが、できるだけ先延ばしにする方が良かった。

「アカリ。リストができたわ。買い物に行ってきて。それと、必ず新鮮なトマトを選んでね。他の注文のために大量に必要なの」アカリはうなずき、ラップトップのキーを打ち始めた。

「ところで、エムシン・インダストリーズの社長って誰?」シトラは鍋の中をヘラでかき混ぜながら尋ねた。彼女はイチゴシロップを作っていた。

その質問にマリッサは一瞬固まったが、すぐに作り笑顔を浮かべた。明らかにラファエルとは関係ない。彼はシンクレア工業のオーナーで、このエムシンは別の誰かだ。しかし、彼女もその会話に興味を示した。

彼女たちは、アカリが最近ディーンと話していることを知っていた。

「わからないわ」アカリは無造作に肩をすくめ、携帯を手に取った。「ディーンに聞いてみるわ」

マリッサとシトラはそれを聞いて笑った。

「アカリ。かわいそうな人を仕事中に邪魔しないで」しかしアカリは人差し指を立てて二人を黙らせた。

「電話はしないわ。メッセージを送って、返事できるか見てみるだけよ」

彼女たちがアカリをからかっているとき、誰かがドアをノックした。ノックは自宅の玄関ドアではなく、商業キッチンのドアだった。つまり、ビジネスで誰かが来たということだ。

「こんにちは、マリッサ!」黒いスーツを着たアミール氏が、えくぼのある笑顔で中に入ってきた。「元気?」

笑顔を浮かべていたマリッサの顔から笑みが消えた。彼が何のために来たのかわからなかったが、第六感が何か悪いことだと告げていた。

「アミールさん?」