「皆さんと初めてイベント担当として会うことになりました」マリッサは頷いている聴衆を見渡した。
「ええ、知ってますよ」ケイトは皮肉な笑みを浮かべて言った。「昨日まであなたはここに座って、ディーンの話も聞いていなかったじゃないですか。それが今や、何の資格も認定もないのに私たちの担当になるなんて」
一瞬、マリッサは頭がクラクラした。この女性が人前で彼女にこんな無礼な言葉を投げかける厚かましさに。
「ケイトさん。私の会議で気が散っても構いませんよ。本当に気にしません。でも資格や認定のことについては、エムシンの社長に直接行って、彼の決定に異議を唱えたらいかがですか…」
ケイトは目を転がし、あざ笑うように首を振った。
担当者を決めるようラファエルに話を持ちかけたのは彼女だった。彼女がそのアイデアを出したのだ。
婚約者を信じなかった自分が馬鹿だった。マリッサが全てを奪い取り、自分は何も残らないと言っていたのに。
アミールは正しかった。
周りの参加者が立ち上がった時、彼女は少し驚いた。ラファエルが会議の進捗を確認しに来ていた。
「こんにちは、社長」ケイトは他の人々と共に笑顔で挨拶し、彼の唇の端にあるえくぼがなんてセクシーなんだろうと気付いた。
「皆さん、調子はどうですか?」彼はマリッサの方を向いて「担当者として何か問題はありませんか?」と尋ねた。
マリッサは首を振り、聴衆を指差して言った。「私に割り当てられたのは協力的なグループです。皆さん一緒に仕事がしやすい方々です、シンクレアさん」
ラファエルはマリッサが何か書き込んでいたホワイトボードを見ようとしたが、彼女は素早くボードを裏返し、その場にいた全員を笑わせた。
「シンクレアさん。このイベントはあなたのためのものですから、申し訳ありませんが、詳細は共有できません」彼女はチームメンバーに意味深な視線を送り「皆さん、そうですよね?」
全員が頷くか手を挙げて支持を示した。ケイトだけがそれを面白く思わなかった。
彼女は願った…彼と二人きりになれる機会を願った。一度でもそのチャンスがあれば、マリッサよりも自分の方がふさわしいと簡単に説得できるはずだった。