42- 絶望的な

ヴァレリーは電話を切り、しばらく考え込んだ。ラファエルがこんな甘い口調で話しかけてくるのは久しぶりだった。事故の前のように。

今、さらに奇妙なことが起きていた。例えば、彼がカンダートンにこんなに長く滞在していることだ。今までにないことだった。

カンダートンはまだ発展途上の街で、ラファエルの好みではなかった。何か怪しいことが起きているのではないかと彼女は思った。

電話中、彼はとても忙しそうだったので、ヴァレリーは公文書を彼の手から奪い取って、その厚い頭蓋骨に少しは分別を入れようと、顔面に叩きつけたい衝動に駆られた。

昔、彼は彼女を愛し、常に崇拝していた。それなのに何がいけなかったのだろう？

ニーナによれば、彼は自分がヴァレリーではなくマリッサと暮らしていたことを知らなかったという。彼は疑いを持ち始めているのだろうか？

いや。そんなはずはない。

彼女とニーナは常に完璧な計画に従って行動していた。どうしてそんなことがありえるだろう？

それとも、子供がいないせいだろうか？

誰かに鉄の拳で心臓を握りしめられているような気がした。流産のことを思い出した。すぐにまた赤ちゃんに恵まれると思って、深刻に受け止めなかったことを。

でも、それは叶わなかった。

今、彼女は豪華客船に乗って息をのむような海の景色を楽しんでいた。下唇を噛みながら、ラファエルの母親であるニーナ・シンクレアにもう一度電話をかけた。

「もしもし」息子と同様、彼女も忙しそうだった。世界中の誰もが、素晴らしいグループと世界一周の旅を楽しんでいる彼女以外は、皆忙しそうだった。

「ニーナ？お元気？」彼女は興奮した様子で尋ね、手にドリンクを持って笑い声を上げている陽気な友人たちから離れて片隅に移動しようとした。

「元気よ。まだツアーで忙しいの？」ニーナはさりげなく尋ねた。いつもの親しみやすさが声から消えていた。

「ええ。あと2週間あるわ」彼女は気軽な口調を装った。

「ああ！私の息子のお金を無駄遣いする以外に、もっとましなことはないのかしら、ヴァレリー？」ニーナの口調は失礼ではなかったが、言葉は厳しかった。

「このツアーには彼が私を送り出してくれたのよ、ニーナ」彼女は説明しようとしたが、ニーナはその気分ではないようだった。