マリッサは泣いているアビゲイルを腰に抱えながら、フルーツの盛り合わせをアレックスに手渡し、「アリエルと一緒に食べなさい」と指示してから、再びアビーに注意を向けた。
「アビー、ハニー!」帰宅してから、アビーは何故か機嫌が悪かった。ソフィーは留守中、みんな良い子にしていたと誓ったが、今やアビゲイルは赤ちゃんのように抱っこされたがっていた。
彼女は常にママの腰にくっついていた。
「泣かないで、スイートハート」と子守唄のように優しく語りかけ、頭にキスをした。母親の手は自然と何度も子供の額に触れ、熱がないか確認していた。
「ママ、見て!アリエルが私を見てる」と少女は、フォークでリンゴを口に運んでいる姉を指差した。
「違うわ、お姉ちゃんはフルーツを食べながらアレックスと話してるのよ。あなたも一緒に行って元気を出しなさい」しかしアビゲイルは返事の代わりに、ママの首筋に顔を埋めた。
マリッサは電話が鳴るのを聞いて目を閉じた。電話を探し始める。「どこにあるの?」と周りを見回しながらつぶやいた。
テーブルの上にはなかった。キッチンカウンターにも見当たらなかった。
「まったく!さっきどこかで見たのに」疲れた息を吐きながらアレックスを呼んだ。「アレックス!お願い、ママの電話を探して」
アリエルに何か話していたアレクサンダーは、疲れ切った母親の顔を見て優しく微笑んだ。「ママの手の中だよ!」
神様!マリッサは頭を壁に打ち付けたくなった。画面も見ずに電話に出た。
「はい?」疲れた声で答え、アビーを少し跳ねさせた。
「マリッサ?デリンダよ。元気?」友人の声には心配が滲んでいた。
「ええ、元気よ。あなたは?」肩と首の間に電話を挟み、空いた手でアビゲイルの頭を撫でた。
「私たちは元気よ、あなたが恋しいわ。良かった、やっと電話が繋がって。シャンチーと私、すごく心配してたのよ」
ラファエルが連れて行く場所を教えてくれなかったから連絡できなかったことを、どう友人に説明すればいいのだろう?
オフィスに行く準備はしたものの、カラールビーチの居心地の良いコテージに着いてしまったのだ。
「ううん、心配しないで、デル。何か理由があって電話が使えなかったの。だからメッセージを送れなかったの」