172- ホワイトパレス

ヴァレリーが不動産屋の事務所に入ると、そこにニーナが既に座っているのを見つけて驚いた。

「あら、ヴァレリー」ニーナも彼女を見つけて驚いた様子で、「どうしてここに?」と友好的に尋ねた。

「カンダートンに長期滞在する予定なの、ニーナ」彼女は肩をすくめて笑みを浮かべながら、別の席を探した。「だからここが一番の相談場所よ」

ニーナは小さく頷き、不動産屋と握手を交わしながら立ち上がった。「ありがとう、メアリー。私の希望に合う物件が見つかったら連絡してね」

そして義理の娘に向き直り、「なんという偶然でしょう。私も同じ理由でここに来たのよ、ヴァル」

車に寄りかかって待っているジーナが見える窓ガラスの外を見ながら、ヴァレリーに告げた。「エムシンに行くところなの。今日は一緒に来る?」

ヴァレリーは微笑んで首を振った。幸い、イーサンに数分後に不動産屋で合流するよう頼んでおいた。アシスタントらしく、「もちろんよ、ニーナ」ヴァレリーは髪を耳の後ろにかけながら言った。「害虫に作物を食い荒らされるわけにはいかないもの。最近は殺虫剤が高すぎるわ」ニーナはこれを聞いて大笑いした。

ヴァレリーがマリッサのことを言っているのを理解していた。

「そうね。その意気よ。早く来て、いいプランを立てましょう!」ニーナは彼女の肩を軽く叩き、サングラスをかけて事務所を出て行った。

ヴァレリーは同じ席に座り、女性の不動産屋に最高の笑顔を向けた。彼女はメアリーと書かれた名札をつけていた。

「ご用件は何でしょうか、ミス...」彼女は言葉を途切れさせ、ヴァレリーと目が合うと質問するような表情を浮かべた。

「シンクレア夫人です」不動産屋はペンを落としそうになった。

「シンクレア夫人?でも先ほどの方も...」彼女はニーナが出て行った扉の方を見た。

「あの方は義母で、私は妻です」ヴァレリーは笑顔で説明したが、内心では叫びたい気持ちだった。

ニーナがホワイトパレスを目当てにしていたことは確かだった。

「はい、シンクレア夫人。ご用件は?」メアリーはプロフェッショナルな笑顔で尋ねた。

「ホワイトパレスについて...」

「あら、またですか」今度は不動産屋がペンを机に叩きつけそうになり、置いてあった水のグラスに手を伸ばした。数口飲んでから笑顔を作ろうとした。「コーヒーはいかがですか?」