194- バイブレーター

マリッサは石になったような気がした。

まるで彫像のように。

プールを泳ぐ彼の姿は魅惑的で、目を離すことができなかった。

力強い腕が水を切り裂いていく様子に、彼女はただ息を呑むばかりだった。

ラファエル・シンクレアは彼女をより苦しめていた。何年経っても、彼が彼女の感覚に与える影響に気付いていないようだった。

動くたびに、引き締まった筋肉が躍動する。マリッサの目は彼に釘付けになっていた。足元のタイル床は冷たかったが、体の禁断の部分にゆっくりと広がる熱さに比べれば何でもなかった。

少なくとも、水は幸運だ。彼女が自由に触れない場所でラファエルに触れることができる。この激しい感情の渦は呼吸を困難にしていた。

純粋な魅了の色が彼女の目に浮かんでいた。

何周か泳いだ後、ラファエルはプールの端に着き、一瞬止まった。しばらくして、彼はゆっくりと振り返り、彼女と目が合った。

一瞬、時が止まったかのようだった。目が合った瞬間、彼女は魂と体に衝撃が走るのを感じた。

彼の目は今、彼女が時々目にしていたのと同じ強い光を宿していた。ハンサムな実業家として、彼はモデル並みの美しさを持つ女性たちと出会ってきたはずだ。

それなのに、なぜ彼は彼女に魅力を感じるのだろう?

空気は重くなり、二人の間には言葉にできない緊張が漂っていた。

ラファエルは壁を蹴って、再び泳ぎ始めた。同じ力強い動きで、彼女の方へ滑るように近づいてきた。

マリッサは彼が近づいてくるのを見て心臓が高鳴った。彼は彼女から少し離れた所で止まり、水から上がってきた。水滴が筋肉質な体を伝い落ちていく。彼は濡れた髪を手で掻き上げ、そして彼女の方を向いた。

目が合うと、彼の唇に笑みが浮かび、表情が真面目からいたずらっぽいものに変わった。

「景色を楽しんでいるかい?」彼はいつもの低い声で彼女をからかった。

何でもないかのように取り繰ろうとしながら、彼女は落ち着きを保とうと苦心した。「見てよ!あなたは妄想してるわ。私はただ泳ぎ方を学ぼうとしていただけよ。」

反論した後、彼女は水の中で何かを探すかのように下を向いた。

これまでは心臓だけが彼女を裏切っていたのに。でも今夜は、体全体が彼女に逆らっているようだった。

ラファエルは一歩近づき、腰の辺りで水が優しく揺れた。「大丈夫か?」