女子は嫌味な態度を見せた。
「あの子が可愛いからでしょ、新しい学校一の美人なんだから!」
バスケットボールを抱えて外に出ようとしていた男子が、にやにやしながら言った。
女子は彼を睨みつけた。「下品!柴田裕香は少なくとも才色兼備で、学年でも上位3位なのよ!
あの子なんて何なの?顔以外は柴田裕香に及ばないじゃない??」
「いやいや、あるよ」
あの長い脚とくびれた腰は、絶対領域とストライクゾーンの教科書だぜ!!
「うるさい!邪魔しないで!」女子は怒って言った。
男子が気にせず去った後、森谷美貴も表情を曇らせた。
クラス全員が知っていた。彼女が土屋遥を好きなことも、土屋遥が柴田裕香を好きなことも。
でも柴田裕香は3年生の内田和弘とお似合いのカップルだから、彼女は全く心配していなかった。
しかし今は。
三流高校からの転校生が、彼女から人を奪おうとしている。
森谷美貴は冷笑した。「分を知るということを教えてあげないとね」
それを聞いて、他の女子たちも思わず他人の不幸を喜ぶような表情を浮かべた。
「森谷姉さんが強引に夫を守るってこと?」女子は意図的に良い言葉を選んで言った。
森谷美貴は口角を上げ、傲慢な表情を浮かべた。
「余計なことを言わないで。私は裕香と仲がいいの。裕香がしたくないことを、私が代わりにやってあげるだけよ」
……
午後の自習が始まる直前になってようやく、灰原優歌は教室に戻ってきた。
「ねぇ、新入り。こっちに来なさい」
教壇に座っていた女子が、威張った様子で呼びかけた。
灰原優歌はゆっくりと彼女を一瞥し、薔薇色の唇が軽く上がり、そのまま立ち去ろうとした。
灰原優歌が自分を軽蔑するような態度を見せたことで、森谷美貴の目が急に険しくなった。
彼女は拳を握りしめ、何度も冷笑した。
この灰原優歌は本当に傲慢だ。
永徳には彼女を懲らしめられる人がいないと思っているのか?!
しばらくして。
灰原優歌が自分の席に戻る前に、席が黒いペンキで汚され、教科書も完全に使い物にならなくなっているのを目にした。
周りの人々は静かで、この光景を無視していた。
数人の男子生徒だけが、黙り込んでいる灰原優歌を見て、同情の念を抱いた。
この美しい花を台無しにするなんて、あまりにも酷すぎる。
森谷美貴は教壇から灰原優歌の動かない背中を見て、すっきりした気分になった。
彼女は軽やかに飛び降り、満足げに笑いながら言った。
「新入り、あなたにルールを教えてあげないとね」
突然。
灰原優歌が口を開いた。「誰がやったの?」
その言葉を聞いて、全員が驚いた。灰原優歌がそんなことを聞くとは思っていなかった。
「誰がやったと思う?」
森谷美貴は腕を組んで、灰原優歌の前に傲慢に立ち、明るく笑った。
副社長の娘である彼女が、柴田家のろくでなし親戚なんかを恐れるはずがない。
「あなた?」
灰原優歌は振り向き、唇の端に意味深な笑みを浮かべた。
ただし、瞳の奥には解けない寒気が漂っていた。
森谷美貴は灰原優歌と目が合い、なぜか背筋が凍るような感覚を覚えた。
しかしすぐに、また嘲笑うように笑った。
「どう思う?灰原優歌、誰かに言われたことある?あなた、自分を大きく見せすぎよ」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、入り口に人影が現れた。
土屋遥が戻ってきたのだ。
彼は雰囲気の悪い二人を見渡し、自分の席に着いてから、やっと何が起きたのか理解した。
土屋遥は眉をひそめ、なぜか心が痛んだ。
「誰がやった?」土屋遥が尋ねた。
その質問に、教室中の人々は更に驚いた!
土屋遥がいつからこんなことに口を出すようになったんだ?
この時、特に森谷美貴は瞳孔が縮み、明らかに土屋遥が介入するとは思っていなかった。