第62章 優歌、君のあだ名かい?

たった今話した人物は、柴田おじい様と柴田の父も知っていた。

柴田家とよく取引のある吉田家の後継者、吉田東雄だった。

端正で色気のある容姿で、外では噂も絶えなかった。

しかし、吉田東雄の隣にいるもう一人の方が、さらに人々の目を引いた。

その時。

灰原優歌が目を上げると、その淡い色の瞳と視線が合い、すぐに固まってしまった。

これは彼女が初めて久保時渡のこんなにフォーマルな姿を見た時だった。

高級な黒のオーダーメイドスーツを着こなし、より一層彼の背の高さと気品が際立っていた。

深く冷たい目元には、何気ない距離感が漂っていた。

そんな折。

男は何気なく少女の呆然とした様子を見て、唇の端に軽薄でだらしない笑みを浮かべた。

同時に。

吉田東雄が紹介を始めた。「そうそう。柴田大旦那、こちらは私の友人の久保時渡です。」