第15章 あなたの旦那様はとてもハンサムね

「じゃあ、彼氏に電話してもらえる？」

おばあさんは明らかに信じていなかった。

その言葉を聞いて、灰原優歌も思わず軽く笑った。

彼女の瞳は澄んでいて魅力的だった。「おばあさん、彼は仕事で私を養ってるんです」

……

おばあさんがしつこく迫るので、灰原優歌は仕方なくカフェに案内した。

おばあさんが自分の孫を熱心に売り込んでいる時、灰原優歌の漫然とした視線が入口の人影に偶然気付いた。

彼女は突然立ち上がり、「おばあさん、少々お待ちください。すぐ戻ります」

「ちょっと待って、まだ孫の写真を見せてないのよ！」

おばあさんがアルバムを開こうとした時、灰原優歌はすでに外に出ていた。

入口で。

王子様のような格好をした小さな男の子が、キャンディーを舐めながら通り過ぎる車を数えていた。

背後の気配を感じ、振り向いて来た人を見た途端、男の子の目が輝いた！

「お姉ちゃん！」

「坊や、お兄ちゃんはいる？」

小さな男の子は近くのレストランをちらりと見て、激しく首を振った。

いいえ、もうお兄ちゃんはいません。

灰原優歌はその言葉を聞いて、さらに明るく笑った。

彼女はかがんで、誘うように言った。「おいで、お姉ちゃんと行こう」

小さな男の子が灰原優歌と離れた後、老夫人との電話を終えた男性が、先ほど男の子が立っていた場所に戻ってきた。

「曽田さん、墨はどこだ？」

男性の冷たい声色を聞いて、曽田助手は震え上がった。

「さっき、若様が付いてこないようにと…」

……

カフェの中で。

おばあさんが灰原優歌が逃げてしまったのではないかと心配していた時、あの姿が戻ってきた。

ただし、今度は小さな男の子の手を引いていた。

「この子は…」

おばあさんが眉をひそめて躊躇していると、灰原優歌に遮られた。

彼女は笑顔で、しゃがんで男の子にキスをした。

「私の息子です」

キスされた男の子は、真っ白な可愛らしい顔が薄いピンク色に染まり、恥ずかしそうにした！

灰原優歌が何を言っているのかなど気にも留めていない様子。

「こんなに若くて息子がいるの？？」

おばあさんの声は思わず高くなり、男の子を観察し始めた。

彼女は疑わしげに、「似てないように見えるけど？」

「お父さんに似てるんです」

灰原優歌はソファに座り、平然と微笑んで答えた。

その言葉を聞いて、おばあさんは依然として灰原優歌が嘘をついているのではないかと疑っていた。

しばらくの膠着状態の後。

隣の男の子が甘い声で、「ママ、帰りたい」と言った。

灰原優歌は眉を少し上げ、男の子の頭を撫でながら、「おばあちゃんをお見送りしたら、帰りましょうね」

そう言って。

灰原優歌はデザートを注文し、男の子に食べさせた。

心の中では、誰が男の子を連れ出したのか、道路に放置するなんて、大人が付いていないなんて、と考えずにはいられなかった。

その時。

おばあさんの目に鋭い光が走り、何か言おうとしたが、突然止まった。

「この子があなたの子供なら、それは…」

「はい？」

灰原優歌は振り向いて、おばあさんを見た。

おばあさんが遠くを呆然と見つめ、そして無意識に灰原優歌の隣の男の子を見ているのが分かった。

続いて。

おばあさんが呟くのが聞こえた。「似てる、とてもよく似てる」

灰原優歌は体が硬直し、良くない予感がした。

すると、またおばあさんが感心したように言った。「でも、この子のお父さんは申し分ないわね！若い人は機会の掴み方を知ってるわ！」

灰原優歌はその言葉を聞いて、すぐに振り向いた。

そこには、清冷で気品のある男性が彼女に向かって歩いてくるのが見えた。

灰原優歌の艶やかな目尻が微かに動き、まだ弁明する間もなかった。

おばあさんが褒めるように言った。「あなたの旦那様はとても素敵ね」

PS：灰原様：恐縮です。