七組でも議論が飛び交っていた。
「うちのクラスに転校生が来るって、本当なのかな?」
ある女子が不満そうに言った。「じゃあ、私の隣の席になるってこと?」
彼女の隣の空席以外にも、もう一つの空席には誰も座ろうとしなかった。
「イケメンかもしれないよ?」
「無理でしょ、噂によると女の子だって」
彼女は嘲笑いながら言った。「しかも、柴田裕香の家と関係がある人らしいわ。でも、柴田家のお嬢様である柴田裕香は試験を通じて特進クラスにいるのに。これはどういうことなの?」
「噂によると、柴田家の親戚なんじゃない?」
別の女子が他人の不幸を喜ぶように、優越感たっぷりの口調で言った。「貧乏な親戚なんでしょ。学校一の美人の家でさえ避けられないのよね」
「ねぇ、転校生ってどんな顔してるのかな?」
「田舎者だから、普通の顔してれば上出来でしょ」
その時。
噂の的になっていた灰原優歌は、職員室のドアを開けたところで、彼女の印象に最も残っている元主人公と出くわしてしまった。
内田和弘の容姿は確かに優れていて、風格があり、普通の制服を着ていても、その卓越した雰囲気は隠しきれなかった。
ただし、灰原優歌の印象に強く残っているのは、内田和弘と元の主人公には婚約があったということだ。
柴田裕香を怒らせるために、人前では元の主人公に優しくしながら、二人きりの時は分不相応な期待を抱くなと言い、さらには柴田裕香のために元の主人公に手を上げたこともあった。
そして内田和弘には多くの追っかけがいて、そのせいで元の主人公は多くの屈辱を受けた。
最後には、柴田裕香と内田和弘が結ばれるのを見なければならなかった。
そのことを思い出し。
灰原優歌は艶やかな瞳を細めて、危険な表情を浮かべた。
内田和弘も背後からの視線を感じたのか、振り返った。
灰原優歌を見た瞬間、彼の目に驚きの色が走ったが、すぐにこの少女がどこか見覚えがあることに気付いた。
「灰原優歌?」
いつも冷静沈着な元主人公の内田和弘でさえ、信じられない様子だった。
しかしそれも束の間。
内田和弘は眉をひそめ、昨日柴田裕香から聞いた、灰原優歌が柴田家の兄に頼んで転校させてもらったという話を思い出した。
しかも、これは多分彼のためだろう。
「ここまで追いかけてくる必要はないだろう?」内田和弘は軽蔑するような口調で言った。
しかし。
目の前の少女は、あまりにも美しい瞳で、さらりと彼を無視した。
彼を完全に無視して、七組の担任の前に歩み寄った。
「上田先生ですか?」
上田先生は目の前の美しく華やかな少女を見て、少し驚いた様子で「君が転校生?」と尋ねた。
「はい」
灰原優歌は物憂げに答えた。
この時、横で無視された内田和弘はようやく、灰原優歌が担任を探しに来ただけで、自分を探しに来たわけではないことに気付いた。
しかし何故か、彼の心には少し不快な感情が残った。
内田和弘は唇を引き締め、以前の灰原優歌の過度な熱心さを思い出して、その場を去った。
その時。
担任は好奇心を抑えきれなかった。
「内田和弘と知り合いなの?」
これは高校三年生で学年一位の生徒なのに!
「はい」灰原優歌は無関心そうに目を伏せ、長期の徹夜のせいか、目尻が少し赤くなっていた。
「どうやって知り合ったの?」
担任は興味津々だった。
すると灰原優歌は突然嘲笑い、少し面白そうに「精神病院です」と答えた。
担任は「……」
彼はこの生徒が精神病院から出てきたばかりだということを知っていた。
チャイムが鳴ると。
七組は賑やかになった。
誰かが他人の不幸を喜ぶように言った。「来たよ来たよ、学校一の美人の親戚。また立ったまま殴られるのが好きな子らしいよ」