土屋遥は目を光らせた。
彼女は柴田家に居候しているはずなのに?柴田家の権力をもってすれば、アルバイトなんてさせるはずがない。
土屋遥は思わず同情の念を抱いた。
「勉強の邪魔になるぞ」
しかし、その言葉が落ちると、二人は目を合わせ、空気が一瞬凍りついた。
「別に勉強することなんてないわ」彼女は物憂げに笑い、彼の横を通り過ぎて去っていった。
この不勉強な様子に、土屋遥は眉をピクリと動かした。
少なくとも柴田家の遠い親戚なのに、どうして柴田裕香とは性格が正反対なのだろう?
柴田家のお嬢様である柴田裕香は、ほとんど何をやっても一流で、成績も学年でトップ3に入り続けている。
自分に対する要求も極めて高い。
……
夜が深まっていく。
柴田家。
灰原優歌がまだホールに入る前に、中からピアノの音が聞こえてきた。