なんとなく。
一番近くにいた女子生徒は、灰原優歌の美しい目元と反抗的な様子を見て、思わず胸が高鳴った。
以前から噂になっていた。灰原優歌が学校の制服シャツを着て、ネクタイを緩く締めている姿が、かっこよくてセクシーだと。
でも今、彼女が片手でネクタイを外して相手の顔に投げつける様子を目の当たりにして、本当にやられたと感じた。
最高すぎる!!
永徳高校全体で、灰原優歌は初めて、ネクタイをしていても特別なオーラを放つ女子生徒だった。
ただし。
これも数年前の男子生徒たちのおかげだ。
以前の永徳高校では、男子はネクタイ、女子はリボンだった。
毎年、男子がピンクのリボンを奪って着けるという不格好な事態が続き、数年前から男女ともネクタイに統一されることになった……
灰原優歌の冷たい眼差しを見て、さっきまで意地悪な口調で話していた男子生徒は、急に黙り込んでしまった。
その後。
灰原優歌が自分の席に戻り、スマートフォンを触り始めるまで、教室の雰囲気は少し和らいだ。
さっきは、本当に怖かった。
……
1組。
柴田裕香は講堂でピアノを演奏し、計算研究所の研究者たちを迎え、また注目を集めた。
しかし今、彼女の気分はあまり良くなかった。灰原優歌が金井先生の好感を得たからだ。
柴田裕香は宿題をしながら、突然隣で話している声が聞こえてきた。
「さっき7組でまた喧嘩になりそうだったって知ってる??」誰かが小声で興奮して言った。
「すごいな7組、誰??土屋遥それとも灰原優歌!?」
「灰原優歌よ!!」
「彼女が来てから、土屋遥の不良王の座を奪いそうだよね?」話者は皮肉な口調で言った。
しかし、別の女子生徒は真剣に興奮して言った。「それは灰原優歌が悪いわけじゃないでしょ!男子が生意気なことを言って、しかも優歌の前で言ったのよ!
知らないでしょ、私が友達の席に座ってたんだけど、このお姉さんが片手でネクタイを外して、その男子の顔に投げつけたの!
もうかっこよすぎて足がガクガクして、心まで溶けちゃいそうだった!!私、早恋するなら性別にこだわらないって決めた!」
「……やめとけよ、相手が性別にこだわらないとしても、お前は選ばれないって。」
「……黙ってくれない?」
……
会話を聞いていた柴田裕香は拳を握りしめ、目に暗い影を宿した。