第71章 書き写し終わってから昼食を食べましょうか?

「下で待っていて」

灰原優歌は目覚めたばかりで、声には怠惰さが滲んでいた。

女は不満げに灰原優歌を見つめ、拳を強く握りしめた。

彼女も一流大学を卒業し、容姿も家柄も申し分ないのに、愛人の高校生に家庭教師をしなければならないなんて!?

女は目の前の美しすぎる少女に、何か驚くような背景があるとは思えなかった。

「私の言葉が分からない?」

灰原優歌は彼女を横目で見て、意味ありげに笑った。

その瞬間、女は何故か軽く震え、すぐに寝室を出て行った。

十分後。

灰原優歌は身支度を整え、着替えを済ませて階下へ降りた。

彼女は目を上げ、ソファに座る女を見た。Vネックのタイトな薄手のワンピースを着て、グラマラスな体つきをしていた。

ただし、家庭教師らしくない様子だった。

でなければ、朝食を持って二階に上がり、久保時渡の部屋のドアを直接開けたりはしないはずだ。

女も階段の物音を聞き、すぐに笑顔で言った。「お嬢様、申し訳ありません。あなたがそこにお休みだとは知りませんでした…」

「大丈夫です。先生がこんなに熱心だとは思いませんでした」灰原優歌はゆっくりと笑みを浮かべた。

この言葉に、女の顔は赤くなったり青ざめたりした。

「いつから始めましょうか?」灰原優歌は尋ねた。

灰原優歌は自由奔放に見えたが、本質的に人に迷惑をかけるのは好まなかった。

これは久保時渡が頼んだ家庭教師なのだから、彼にこのことで心配をかけたくなかった。

そもそも、彼女には補習は必要なかった。

「朝食を済ませられましたら、始められます」

女は作り笑いを浮かべながら言ったが、心の中では酸っぱい思いが込み上げてきた。

こんな情趣を解さない女の子が、どうして渡様の興味を引くのだろう?

でも。

今ここにいられるということは、必ず渡様に会えるチャンスがある。

そうすれば、渡様は大人の女性の良さを知って、こんな分別のない子供なんか好きでなくなるはず。

そう考えると、女の表情も和らぎ、辛抱強く傍らで待っていた。

……

食卓で。

灰原優歌は朝食を取りながら、翻訳した症例をスティーブンに送信した。

その時。