第71章 書き写し終わってから昼食を食べましょうか?

「下で待っていて」

灰原優歌は目覚めたばかりで、声には怠惰さが滲んでいた。

女は不満げに灰原優歌を見つめ、拳を強く握りしめた。

彼女も一流大学を卒業し、容姿も家柄も申し分ないのに、愛人の高校生に家庭教師をしなければならないなんて!?

女は目の前の美しすぎる少女に、何か驚くような背景があるとは思えなかった。

「私の言葉が分からない?」

灰原優歌は彼女を横目で見て、意味ありげに笑った。

その瞬間、女は何故か軽く震え、すぐに寝室を出て行った。

十分後。

灰原優歌は身支度を整え、着替えを済ませて階下へ降りた。

彼女は目を上げ、ソファに座る女を見た。Vネックのタイトな薄手のワンピースを着て、グラマラスな体つきをしていた。

ただし、家庭教師らしくない様子だった。

でなければ、朝食を持って二階に上がり、久保時渡の部屋のドアを直接開けたりはしないはずだ。