第118章 お兄さんは本当に得をした

「おばあちゃん、あの人は30代の大人なのよ。赤ちゃんみたいな甘えは許されないわ」

灰原優歌は眉間を押さえながら、軽く笑った。

おばあちゃんは孤児院を経営していて、利益はそれほど多くないのに、とても質素な生活をしていた。林建己に与えられるものは全て与えていた。

しかし。

その林建己は、まるで借金取りのように振る舞っていた。まるでおばあちゃんが前世で彼に何か借りがあるかのように。

「おばあちゃんにはわかっているわ。でも、建己おじさんには借りがあるの」おばあちゃんは長いため息をつき、表情には無力感と喪失感が浮かんでいた。

実は、おばあちゃんも昔は裕福ではなく、山奥から出てきた子供だった。厳密に言えば、都会に人身売買されたのだ。

ただ、おばあちゃんは運が良く、逃げ出した時に一人の紳士に助けられ、その後、学校に通う機会を得た。