「そうですね、柴田裕香は天の寵児だから、親が呼び出されるなんてありえないでしょう。それは灰原優歌だけの待遇ですね」
「そうよね、誰だってもっと賢くて優秀な妹の方が好きでしょう?」
……
これらの言葉を聞いて、柴田裕香の目の奥に暗い色が走り、最近の柴田裕也の態度を思い出した。
「柴田さん、私、先に見てきますね」
女子生徒は柴田裕香の表情に気付かず、そう言った。
「ええ、どうぞ」
柴田裕香は微笑んだが、女子生徒が去るとすぐに、その笑顔は消え去った。
「灰原優歌、あなたって本当にすごいわね。私をここまで追い詰めるなんて」
柴田裕香は無表情で階段を見つめ、突然笑い出した。その美しい顔が歪むほどに。
しばらくして。
みんなが我慢できずに柴田裕也の写真を撮ろうとしたとき、突然遠くから悲鳴が聞こえた。
すぐに誰かが叫んだ。
「大変だ!柴田裕香が階段から落ちた!誰か来て、早く病院に連れて行かないと!!!」
この言葉に、全員が驚愕した。同じ日にこんなことが次々と起こるなんて!
「早く、何をぼんやりしているの?先生に保護者に連絡するように言って!」
柴田裕香と仲の良かった女子生徒が、焦って柴田裕香を支えながら、みんなに怒鳴った。
「待って、柴田裕也さんがいるじゃない?柴田裕香の兄さんなんだから、病院に連れて行ってもらえばいいじゃない!」
「そうよ、早く柴田裕也さんを呼んで!」
……
その時。
多くの人々が柴田裕也を探しに殺到した。
そして、柴田裕也が3階に着いたとき、ある女子生徒が顔を赤らめ、柔らかい声で言った。
「柴田さん...柴田裕香さんが階段から落ちて、今とても深刻な状態なんです。階段のところにいるんですけど。あの...」
それを聞いて。
柴田裕也はゆっくりと目を上げた。その眉目は相変わらず美しく高慢で、人々を魅了した。
しかし次の瞬間、みんなは柴田裕也が黒いスーツのボタンを丁寧に留め、ゆっくりと言うのを見た。
「すみません、どいていただけますか?」
この態度に、話しかけた女子生徒の赤かった顔が真っ青になり、その場で固まってしまった。
それを見て、柴田裕也は女子生徒を避けて通り過ぎ、職員室を探し続けようとした。
「柴田さん!灰原優歌さんを探しているんですか?でも柴田裕香さんが怪我をしているのに、どうして...」