柴田裕香が悲しそうに泣いているのを聞いても、柴田裕也は少しも動揺せず、むしろ高慢な目つきで、いらだちの色を浮かべていた。
「もう言い終わったか?」
「お兄さん、私こそがあなたと一緒に育った人よ」柴田裕香は目の奥の悔しさを隠し、病床に座って、すすり泣きながら言った。
「私も最初から、優歌が取り違えられていなかったらよかったと思う」
柴田裕也は一言一句はっきりと言い、柴田裕香の心を徐々に凍らせた。「これら全ては、本来優歌のものだ」
「お兄さん、あなた…」柴田裕香は口を開きかけた。
「掲示板で優歌を中傷したユーザー情報は、もう調べ上げた。後で送らせる」
柴田裕也は冷ややかに笑い、「母さんが最近私を探しているのも、この証拠のためだろう?それならば、柴田裕香、チャンスをやろう。
よく考えろ。お前の本当の身分を公表するか、それともこれらの証拠を公表するか。二つのうち一つを選べ」
その瞬間。
柴田裕香は全身が震えた。
どちらを選んでも、最後は笑い者になるだけ!
「お兄さん、嫌よ、選びたくない。お兄さん、私が間違っていました…」
「柴田裕香、お前にはそう呼ぶ資格はない」柴田裕也は嘲笑うような口調で言った。
「もういい、無駄話はしたくない。今日の二者択一の答えが出ることを期待している」
柴田裕也は唇の端を上げ、「もちろん、お前が柴田家の取り違えられた偽の令嬢だということは、公表せざるを得ない。お前を柴田家から追い出す」
柴田の母の性格を知っていなければ、柴田裕香のせいで灰原優歌に何かするかもしれないと思わなかった。彼も柴田裕香を今日まで好き勝手にさせなかっただろう。
しかし、どう考えても柴田裕香は厄介者だ。この時限爆弾を早めに柴田家から追い出さなければならない。
柴田裕也は深く考え込んだ。
……
午前中。
学校では西尾翔が救急車の担架で運ばれたこと、そして灰原優歌の二人の兄が現れたことが、すっかり広まっていた。
「やばい、柴田裕也マジでかっこいい!!私、足がガクガクしちゃった!!!」
「なにそれ!灰原優歌にはもう一人兄がいて、柴田裕也よりもかっこいいって聞いたよ!!これって灰原優歌の大兄なのかな!?」
「わかんない。みんな適当に推測してるだけで、誰も聞く勇気ないみたい」
……
この時、教室での噂話を聞いた土屋遥は眉をひそめた。