第163話 自分にはないのか?

一瞬のうちに。

生活指導の先生は思わず口を閉ざし、背中の冷たい感覚が長く残った。

一人の生徒が、どうしてこんな恐ろしい眼差しを持っているのか?

やはり、以前から真面目な生徒ではなかったのだ!

「この手紙は、私の席から見つかったんですか?」

灰原優歌は佐藤知行の方を見た。

佐藤知行は表情を曇らせながらも、うなずくしかなかった。

昨日の昼頃、生活指導の先生は匿名の通報を受け取り、7組に恋愛をしている生徒がいると告げられた。

その後、生活指導の先生が7組で訓話をしている時、クラスの国語委員が課題を集めていた。その手紙は、灰原優歌の課題の中から落ちてきたものだった。

全員がその場面を目撃していた。

「先生、これは私の席から見つかったものだから、私のものだと?」

灰原優歌は気にも留めずに問い返した。

「そうでなければ何なのだ?」生活指導の先生は不機嫌な表情を浮かべた。

しかし。

灰原優歌はそれを聞くと、美しい眉目に軽い笑みを浮かべ、だらしなげに。

彼女は気ままに自分の席に座り、突然引き出しから何束もの恋文を取り出した。

合計で3束もあり、引き出しの半分を埋め尽くすほどだった……

「じゃあ先生、どれのことを言ってるんですか?」

その瞬間。

空気が不気味な沈黙に包まれ、灰原優歌は怠惰そうにグレーのネクタイを緩め、その姿は艶やかで意気揚々としていた。

一つ一つの仕草が、少年のような魅力を放っていた。

生活指導の先生の顔は墨を垂らしたように黒くなり、明らかに灰原優歌にこんな状況があるとは想像していなかった!

クラスメイトたちも同様に信じられない様子だった。

灰原優歌は学校での評判が良くないと言われていたのではないか?男子生徒は皆、このような浮気っぽい女子は好まないのではないのか??

みんな大嘘つきじゃない!!!

「まずい、私の親友も先日こっそり恋文を入れたのに、まさかそんな不運なことになるなんて」隣の清楚な女子生徒が不安そうに言った。

「あなたの親友って、1組のあの子?」

「そうよ!」

「あれって女の子じゃない?」

「女の子だって恋文を送れないの??」彼女は反論した。

この時、みんなはより一層沈黙した。

なるほど。

男子だけでなく、女子からも恋文が……