第206話 今まで、全部演技だったの！？

「まさか！？？」

裕香でさえ、この楽譜は習得が難しいと言っているのに、灰原優歌がどうして一度聴いただけで弾けるというの？？

森谷美貴だけでなく、柴田裕香の表情も非常に険しくなり、彼女は灰原優歌を見つめていた。

ありえない。

以前、灰原優歌が柴田家に戻ってきた時、彼女は意図的に優歌の能力を試していた。ピアノどころか、五線譜さえ読めない人だったはずなのに！

「灰原さんは完璧に弾き切り、麻奈未の曲の三分の一を正確に再現しました」

吉田東雄は軽く微笑みながら言ったが、心の中では灰原優歌のことがますます読めなくなっていた。

先ほどの楽譜は、彼もかろうじて覚えられる程度だが、灰原優歌のように簡単に演奏するには、少なくとも一週間は練習が必要だろう。

それなのに、彼女はその場でアレンジまでしてしまった。

そして今、吉田麻奈未もようやく理解した！

優歌がその場でアレンジして弾いたのは、自分が書いた楽譜をそのまま繰り返し弾くのは公平ではないと思ったから！？？

そう考えると、吉田麻奈未の灰原優歌を見る目は複雑な感情で満ちていた。

でも優歌のこのアレンジは、柴田裕香たちの面目を更に潰してしまったようね……

まあ、今の彼女たちの表情を見ていると、本当に気持ちいい！！

「ありえない！絶対にこの楽譜を前もってこっそり練習していたはずよ！！わざとやったんでしょ！」

森谷美貴は感情を失って鋭く叫び、灰原優歌と吉田麻奈未を指差して、「あなたたち友達でしょ！吉田麻奈未の楽譜、絶対知ってたはずよ！」

吉田麻奈未：「……」

知らないわけないでしょ？

この楽譜、私が書いたんだから。

「ええ」

灰原優歌は気にも留めずに笑い、眉目には全く後ろめたさがなく、むしろ魅力的に輝いていた。

柴田裕香はそれを聞いて、目の奥に光が走った。

しかし。

次の瞬間、柴田裕香たちがほっと息をつき、優歌を嘲笑おうとする前に、優歌は突然再びピアノを弾き始めた。

30秒以内に、柴田裕香の顔から血の気が引き、全身が凍りついた。

「うわっ！これさっきの柴田裕香の曲じゃない？？」

「これも一度で再現できるの？？？」

「すごい、これが柴田家の新しいお嬢様？やばすぎる！」

「そうよ、誰に育てられたか知ってる？林院長、林蘭よ！！！」