しかし。
橋口美月のその言葉を聞いた友人は、全身が凍りついた。
西尾翔がよく7組に来ていたのは、橋口美月に会いに来ていたんじゃないの??!
女子生徒は目を見開いて橋口美月を見つめ、突然、西尾翔と橋口美月の間の曖昧な関係を思い出した……
だから、この手紙は本当に灰原優歌のものではなく、橋口美月のものだったの!??
しかし、女子生徒が我に返った後、複雑な眼差しで橋口美月を見つめ、最後には俯いて、沈黙を選んだ。
灰原優歌のために、自分の親友を告発するわけにはいかなかった。
「西尾翔?」
担任教師はこの生徒のことを少し覚えていた。確か1組の生徒で、しかも灰原優歌と同じ学校から永徳に転校してきた生徒だった。
ただし、一人は1年生の後期に転校してきて、もう一人は今学期に転校してきた。
「そう、西尾翔は以前、灰原優歌が彼を追いかけていたって直接言っていたわ」
橋口美月は友人の方を向いて、「このこと、雅子が私に教えてくれたのよ。そうよね、雅子?」
雅子は体を強張らせ、頷いた。「……うん」
その言葉を聞いて。
空気はさらに凍りついた。
担任教師でさえ、この状況では灰原優歌が疑いを晴らすのは非常に困難だと感じていた。
「西尾翔のこと、知ってるの?」
土屋遥は小声で優歌に尋ねた。
灰原優歌は少し黙った後、艶のある唇を歪め、冷ややかな口調で答えた。「知ってる」
厳密に言えば、前の自分が西尾翔を知っていた。
それは前の自分が前の高校で知り合った隣のクラスの男子生徒だった。また、前の自分をいじめた加害者の一人でもあった。
最初、前の自分は前の高校では、それほど大きな悪意を受けていなかった。しかし、ある日突然、西尾翔が前の自分にしつこくつきまとい始めた。
これによって、前の自分はクラスの女子たちに軽蔑されるようになった。彼女たちは、前の自分が意図的に誘惑したのだと思い込んでいた。そうでなければ、西尾翔が前の自分なんかに目を向けるはずがないと。
そして後に、しばらくの間指を指されるような状況に耐えかねた前の自分は、みんなの前で西尾翔を拒絶した。
しかし前の自分は、これが悪夢の始まりになるとは思ってもみなかった。西尾翔の扇動により、全員が前の自分を悪意を持って攻撃し始め、スラットシェイミングを行うようになった……