「佐藤、この問題わかる?」
土屋遥は灰原優歌が余裕そうな様子を見て、心に違和感を覚え、思わず後ろに近づいて尋ねた。
「わかるけど……30分くらいかかるかな」佐藤知行はペンのキャップをいじりながら答えた。
この問題は、完全に範囲外だった。
試験で出たら、諦めるかもしれない。
結局、一問にそんなに時間をかけている余裕はないのだから。
「……さっきまで隣の席の奴に期待してたのに」土屋遥は思わず深いため息をついた。
灰原優歌があんなに楽々と書いているのを見て、隣の席の奴が隠れた秀才だと本気で思っていたのに。
「その期待は、間違ってないよ」佐藤知行は深い眼差しで土屋遥を見つめた。
「森谷さん、解き方持ってる?」
誰かが興味深そうに尋ねた。
森谷美貴は首を振った。「答えしかないわ」