「どうしたの?」
灰原優歌は飴を噛みながら、自分の席に戻った。
「『主神図』がトップニュースになったの、見た?」と土屋遥が尋ねた。
「見てない」
灰原優歌は簡潔に答えた。
「ゲーマーなのに、どうしてそんなに無関心なの?」土屋遥は納得できない様子だった。
灰原優歌:「……」
あのゲーム、アプリのアイコンが醜すぎて、アンインストールしてしまったのだ。
でもそれは、灰原優歌は言うつもりはなかった。
「バグでしょ?別に解決できない問題じゃないでしょ、誰かに修正してもらえばいいじゃない」灰原優歌は気にしていなかった。
以前、灰原優歌が引き受けたくなかったのも、この仕事があまりにも技術的な価値がなかったからだ。
「そう簡単にはいかないよ。今はサービス全域が停止してて、内部の人の話では、バグがかなり深刻で、一つ直すとまた別のが出てきて、まるで底なし沼みたいなんだって。
でも先日、業界の天才が早くから気付いていたらしいけど、ゲーム部門が真剣に受け止めなくて、バグの存在を認めなかったんだ。今や事態が表面化して、ゲーム内はチート天国だよ」
土屋遥も少し落ち込んでいた。
多くの人にとって、eスポーツと青春の熱血は切り離せないものだ。
もしこのゲームが終わってしまったら、今後どのゲームが『主神図』のように良いものを作れるだろうか?
「部門は何もまともなことをしていない。スキンばかり出して、バグは放置だ」佐藤知行も普段と違って苛立っていた。
灰原優歌は何も言わず、ただ黙々とiPadを手に取った。
すると、後ろの列の男子も寄ってきて言った。「でも、今は本社もこの件を重視していて、高額な報酬で技術者を募集しているらしいよ」
「どうしてそれが公表されていないんだ?」
「普通の人じゃ解決できないからでしょ。上層部は技術の達人を探していて、なんとか人材を引き抜こうとしているんだって」
それを聞いて、灰原優歌の指が一瞬止まったが、すぐにまた自分の作業を続けた。
「誰か解決できる人を見つけたら、縛り上げてでも連れてきて修正させてやる!」土屋遥は特に強引だった。
灰原優歌は無表情で彼を一瞥した。
その一瞥で、土屋遥は何となく寒気を感じた。
「隣の席の人、機嫌悪い?」土屋遥は声を少し落として言った。
「別に」
土屋遥:「……」