柴田陸信はゆっくりと袖口のボタンを留め、柴田裕香を無視した。
それに柴田裕香の表情が凍りついた。
「お兄さん、私のクラスはこっちよ。」
柴田裕香は甘えるように小声で言った。「お土産を持ってきてくれたって言ってたじゃない?」
その言葉を聞いて、柴田陸信はようやく彼女に視線を向け、突然冷笑した。
低く響く磁性のある声音に、何となく冷たさが漂っていた。「確かにお前への土産は持ってきた。帰ったら分かるさ。」
言い終わると。
柴田陸信は黒い瞳を横に向け、柴田裕香を二度と見ようとはしなかった。
「お兄さん、ありがと...」柴田裕香が明るい笑顔を見せる間もなく、柴田陸信が七組の方へ歩き出すのを目にした。
この光景。
柴田裕香だけでなく、他の人々も思わず食い入るように見つめていた。
柴田家の三人の兄は、みな非常に端麗な容姿をしているが、特に長男の気品は格別で、人々に手の届かない存在という印象を与えていた。