第316章 甘そうに見える

ピアノの音が響き渡る。

宴会の雰囲気が一層華やかになり、多くの人々は柴田家のお嬢様の誕生日パーティーに来て良かったと喜んでいた!

本当にラッキーだったわ!!

そして少し離れたところで。

ステージの下で、赤ワインのグラスを持った男性が、退屈そうな表情を浮かべている少女を、軽やかな視線で眺めていた。

お嬢さんはこういう場が好きではないようだ。

久保時渡は無言で微笑み、灰原優歌のところへ急いで行くこともなかった。

「渡様、さすがですね。上流社会の人々を全員集めましたか。今度お嬢様が久保氏を欲しがったら、それも彼女にあげるんですか?」吉田東雄は冗談めかして言った。

彼は久保時渡が必ず来ると知っていたので、ずっと入り口の様子を見ていた。

案の定、彼がごく自然に入ってくるのを見かけた。