男は、ソファーに寄りかかり、その体から漂う涼やかな香りにお酒の匂いが混ざっていた。シャツの襟元のボタンが2つ外れ、美しい鎖骨が覗いていた。
露出した肌から、人の心を躍らせる引き締まった胸元へと続く官能的な雰囲気が漂っていた。
まるで人を誘惑する犯罪現場のようだった。
灰原優歌は長い睫毛を震わせ、瞳の奥に秘めた想いと、ある衝動的な考えを隠した。
「お兄さん、寝ちゃった?」
優歌は尋ねた。
しかし、しばらく経っても、ソファーに寄りかかった男からは何の反応もなかった。
「こんなに深く寝てるなんて」
優歌は独り言を言いながら、頬杖をつき、人差し指で男の睫毛を優しく撫でた。「どうしてこんなに綺麗なの?」
そう言った後。
突然。
優歌の脳裏に、前回吉田麻奈未が言った言葉が浮かんだ。