三浦夫人が柴田おじい様に泣きながら訴えていた時、ちょうど柴田陸信に見つかってしまったのだ。
三浦夫人は柴田陸信を見るなり手を出そうとしたが、柴田陸信のボディーガードたちに病院から追い出されてしまった。
さらに、病院に対して柴田おじい様への部外者の面会を禁止するよう伝えられた。
これで、三浦家は完全に柴田家に恨みを抱くことになった。
……
昼過ぎ。
灰原優歌が目を覚まし、部屋でメールを処理している男性を見て、「お兄さん?」
彼女は起き上がり、また久保時渡の部屋で寝ていたことに気付いた。
この一ヶ月、彼女はもう久保時渡と部屋を交換しなくても眠れるようになっていた。しかし、ちょうど本橋桜の命日が近づいていた。
毎年この時期は、薬を飲まないと精神的なプレッシャーを少しでも和らげることができない一週間だった。
思いがけず、また久保時渡の部屋でこんなにも安らかに眠れた。
「目が覚めた?昨日は悪夢を見たの?」久保時渡は彼女の包帯を巻いた手に目を向けた。
灰原優歌:「うん。」
灰原優歌がベッドから降りようとした時、自分の手が既に誰かに包帯を巻かれていることに気付いた。
「お兄さん、私の手……」
男性の眉目は清楚で禁欲的で、怠惰な声音で、人を魅了する笑みを含んで軽薄に尋ねた。「どうした、優歌は寝ている時にお兄さんを困らせて、目が覚めてもお兄さんを困らせるつもりかな?」
灰原優歌は胸が高鳴り、この男性の言葉が表面的な意味ではないような気がした。
「お兄さん、私、寝ている時に何かしましたか?」灰原優歌は平静を装って尋ねた。
彼女は夢遊病だったことなんて覚えていない。
「特に何もしていないよ。」
その言葉を聞いて、灰原優歌の不安な心が落ち着いたかと思いきや、男性の語尾が長く引き延ばされ、挑発的で暗示的な、人の心臓を高鳴らせるような言葉が続いた。「ただ、お兄さんに対して、かなり情熱的だったけどね。」
「……」
灰原優歌は表情を変えずに話題を変えた。「手当てをしてくれてありがとうございます、お兄さん。」
「薄情者め。」
男性はほとんど気付かないほど軽く唇を曲げ、その後怠惰に言った。
その後。
灰原優歌がベッドから降りて自分の部屋に携帯を取りに行くと、石川信方からメッセージが来ていた。